Tuesday, February 23, 2016

慰安婦問題に関する日本政府の正論

今月16日、外務省の杉山晋輔外務審議官は、ジュネーブの国連欧州本部で行なわれた女子差別撤廃委員会の対日審査で、慰安婦の強制連行説は「捏造」に基づくもので、20万人という数字は具体的な裏付けはない、また、「性奴隷」という表現は事実に反する、と述べた。日本政府が国連の場で、慰安婦問題の事実関係を初めて明確に説明したのだ。

1993年、政府が慰安婦を強制したという証拠が一つも見つかっていないにも関わらず、無責任にそれを認める河野談話が発表され、以来、日本政府は、この問題について、うやむやな態度を取り続けてきた。元慰安婦を名乗る女性達の証言はつじつまが合わず、日本軍が慰安所の衛生管理などを徹底し慰安婦に対して高額な給料を支払っていたことや、多くは朝鮮人の悪徳ブローカー(女衒・ぜげん)に対する取り締まりが行なわれていたという証拠などがある中、学者や民間団体は、海外に慰安婦問題の真実を知らせなければ、と懸命に草の根活動を続けた。

しかし、「日本政府が強制連行を認めているではないか」と言われてしまい、なかなか取り合ってもらえない。その間にも、「日本軍による20万人性奴隷説」は意図的に、精力的に世界に広められ続けた。今回の外務省代表の説明は、遅すぎるのではあるが、この問題の解決に、極めて重要な一歩といえる。 

以下に、女子差別撤廃委員会での、専門委員と杉山外務審議官のやりとりの要旨を一部紹介する。〔国連人権高等弁務官事務所(要旨)より一部翻訳、産経新聞(要旨訳)・読売新聞(要旨訳)・「慰安婦の真実」国民運動(該当部分全訳と思われる)より一部引用・参照〕

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女子差別撤廃委員会専門委員:慰安婦問題についてだが、人権侵害というものは被害者が納得のいく結果になるまでは終わらない。日本代表には韓国との合意を法的に説明してほしい。どのように実行していくのか。また、どのように日本軍の役割を調査するのか。外国人を含む被害者たちに謝罪し補償するのにどのような段階を踏んでいくのか。

杉山外務審議官:慰安婦問題に関しては、日本、韓国両国の間で、最終的かつ不可逆的に解決されることが確認された。日本政府は、日韓間で慰安婦問題が政治外交問題化した1990年代初頭以降、慰安婦問題に関する本格的な事実関係調査を行った。日本政府が発見した資料には、軍や官憲によるいわゆる「強制連行」を確認できるものはなかった。 

慰安婦が強制連行されたという見方が広く流布された原因は昭和58年、吉田清治氏(故人)が「私の戦争犯罪」という刊行物の中で、自らが日本軍の命令で韓 国の済州島で大勢の女性狩りをしたという事実を捏造して発表したためだ。この内容は朝日新聞社により事実であるかのように大きく報道され、日本と韓国の世論のみならず国際社会にも大きな影響を与えた。しかし、この書物の内容は複数の研究者により完全に想像の産物だったことがすでに証明されている。朝日新聞も平成26年8月5、6日を含め累次にわたり記事を掲載し、事実関係の誤りを認め、正式に読者に謝罪した。

慰安婦20万人という数字も具体的な裏付けがない。朝日新聞は26年8月5日付の記事で、通常の戦時労働に動員された女子挺身(ていしん)隊と慰安婦を誤って混同したと自ら認めている。 

…今後、韓国政府が元慰安婦の支援を目的とした財団を設立し、日本政府は10億円程度の資金を一括で拠出する。現在、両政府はそれぞれ合意内容を誠実に実行に移すべく取り組んでいる。国際社会は日韓両国の合意を歓迎している。

先の大戦にかかわる賠償や請求権の問題は、サンフランシスコ平和条約、日韓請求権経済協力協定や日中の処理の仕方も含むその他の2国間の条約などによって 誠実に対応してきている。条約の当事者間では、個人の請求権の問題を含めて法的に解決済みというのは、日本政府の一貫した立場だ。にも拘わらず日本政府はアジア女性基金を構築し、我が国の予算からの拠出と一般からの募金によって、一定の活動をした。

女子差別撤廃委員会専門委員:日本代表の慰安婦問題に関する答弁は受け入れられるものではなく、また矛盾するものだ。日本政府は、一方で慰安婦の存在を否定し、また一方で同問題に関する合意を結んでいる。もし日本が慰安婦問題を解決したいのなら、70年にわたって自分たちの立場を認めてもらいたいと待ち続けている全慰安婦に対して、謝罪をするべきではないのか。

杉山外務審議官
:日本と韓国の間で、慰安婦問題は、最終的かつ不可逆的に解決されたと明確に確認された。日本政府が慰安婦問題について歴史の否定をしているとか、何の措置もとっていないという批判は事実に反する。日本政府はその責任を痛切に感じており、誠実に謝罪、後悔の念を表してきた。日本軍が慰安所設立に関わってきたことは、過去に認めている。しかし、慰安婦20万人という数は具体的な証拠がない。繰り返すが、「性奴隷」という表現も事実に反している委員の指摘は、いずれの点においても日本政府として受け入れられるものではなく、残念ながら事実に反することを述べたのは遺憾だ。

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以上であるが、ついでながら言うと、ここで参照した要旨・訳が、それぞれ微妙に異なっていたのが興味深かった。国連人権高等弁務官事務所の掲載する要旨には、上記の二つ目の質問の後半部分、「70年にわたって自分たちの立場を認めてもらいたいと待ち続けている全慰安婦に対して、謝罪をするべきではないのか」の続きに、“An Expert deplored the lack of understanding of gender violence by the delegation...” (専門委員は日本代表のジェンダー暴力に対する理解不足を遺憾に思った…)とある。一方で、「慰安婦の真実」国民運動の掲載している全文訳には、該当箇所にジェンダー暴力云々の記載は見当たらなかった。ここに、「事実関係が何であろうと、女性を慰安婦にすること自体、女性に対する暴力である」と基本的に考えている女子差別撤廃委員会の姿勢が表われているようにみえる。

しかし、「慰安婦問題」は歴史的事実に照らし合わせて検証するべきものだ。「元慰安婦の証言」を何の裏付けもなしに鵜呑みにして、「日本政府が性奴隷にした」などと軽々しく結論づけできるものではない。

杉山外務審議官は、淡々と、毅然と説明・反論していたと思う。日本政府はこの姿勢を崩さず、広がりすぎてしまった誤解を早急に解くべく、引き続き努力をしてもらいたい。


この記事の英語版(準備中)

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